2013年6月15日土曜日

早期肝ガンについて

おはようございます。
今日は早期肝ガンについてお話をいたします。
昨年は肝ガン診断で大きな進歩がありました。
早期肝ガンについて、国際的コンセンサスが出来ました。
日本の久留米大学の神代先生や帝京大学の近藤福雄先生達の
努力のおかげです。
コンセンサスは、早期肝ガンは境界不明瞭で、
間質浸潤があり(門脈域の内にガンの浸潤があるもの)
まだ血管新生がない結節を早期肝ガンと言いましょう
と言うものです。
ガンちゃん先生は、このコンセンサスは待ちに待っていたものです。
今、日本を始め、世界中で肝硬変の結節は多段階に肝ガンになると
信じられています。これを多段階発癌説と言われております。
それに基づいて、細い針生検で適当に診断し、
PEIT(経皮的アルコール注入療法)やRFA(ラジオ波治療)が
行われています。
ところが今度決まったコンセンサスでは
早期肝癌は、間質浸潤があるもの(門脈域の内にガンの浸潤があるもの)
と決まりましたので、
細い針生検では、早期肝ガンは診断は出来ません。
なぜなら、細い針生検では門脈域は、ほとんど取れないからです。
要するに、世界中で適当に良性結節をガンと診断して
RFAなどが行われているのです。
RFAが、きちんとした肝ガンの治療であれば、
ガンちゃん先生は文句は言いませんが、私のところでは
RFAをしてもらった患者さん達はすべて再発し、
それが原因で・・・という患者さん達もかなり居ります。
きちんと早期肝ガンを診断したり、これをどのように扱うかは
今後、日本の医療界全体や世界的にきちんと決めていかなければ
いけない問題だと思っております。

2013年6月1日土曜日

神戸にて

こんばんは。
今、神戸へ来ております。
第16回「肝血流動態イメージ研究会」で
「門脈・動脈同時塞栓療法」を発表してきました。
ちょっと疲れて、
今日泊まるホテルの11階から神戸の夕日を見ながら
これを書いております。
夕日

昨日、「早期肝ガンについて」のお話致しましたが、
このシンポジュウムでは
肝細胞癌の多段階発癌を取り上げており、
日常の肝癌診療において、
慢性肝炎・肝硬変、前癌病変、早期肝癌、進行肝癌の
個別化診断がどこまで可能になってきたのか、
多方面からの最前線の話を伺い、活発に討論される研究会になります。
今回、私の行っております治療法での
早期肝ガンについて、日々の診療経緯などを紹介してきます。
24.門脈動脈同時塞栓療法(Angiographic subsegmentectomy:AS)の
すばらしい成果について (プログラム:47ページ参照)発表してきます。
学会発表は、ほぼ大学病院の先生方ばかりです。
私のような地方の開業医が、
発表することはめずらしいことなのですが、
出来る限り、公の場所で発表するようにしております。
臨床医として、日々の診療や手術をしながら
学会発表や執筆活動をすることは大変なことですが、
今まで患者さん達を最初から最後まで診てきた私が、
こういう場に出て発表することは
すごく大事なことだと思っております。
大学病院などの後ろ盾もなく、
今の日本の医療界の大きな壁を壊すことは難しいですが、
他の先生達に負けないよう、頑張って討論してきます。

2013年5月4日土曜日

はじめまして、ニコラスです。

はじめまして、ニコラスです。
大阪の中規模病院で外科医として働いてマス。
医者になって20年、もう中堅以上の立場にはなってるけど
気分は、まだまだ、仕事を始めた頃のままなんで
現場で走り回ってるのが好きだなあ
医者は全部で150名近くいるけど、
外科の症例がそれほど多くないので、
昔、救命センターで働いていたこともあり、
救急外来を担当することが多い。
救急には、病気やケガもいろいろ来るけど
患者自体、いろんなキャラの人が多いんで
ヒューマンウォッチャーとしても、興味が尽きないし飽きないんだよな。
さあ、今日も、昨日MKの手術をした患者の状態を見に行って
その後は、救急外来で救急車を待ってよっと。

2012年6月9日土曜日

不養生にもほどがある

10年以上前の話だが、
そのころボクは
トテカンチョ病院に月に数回、
外科の昼間だけの外来のバイトに行っていた。
そこには、大学の後輩で
脳外科をやっている岩本先生が、
大学病院の脳外科の医局から出向していた。
彼は医者になって6、7年ほどだった。
トテカンチョ病院の脳外科には、
40代後半の大歳先生が部長でいたが、
脳外科の医者は、その部長と2人だけだったので、
結構忙しくしていた。
しかし、そろそろ、油の乗りかかっている時期でもあり、
手術や検査を一人でできるようになってきて、
仕事が面白くて仕方がないって感じだった。
小さい町の中核病院だったので、
脳外科の患者も多く、
朝から外来をして、昼から手術をして、
合間に検査を入れて、夜は救急の緊急手術に入って、
昼も夜もない生活を続けていた。
ある日、ボクが外来の仕事を終えて、
医局でのんびりとコーヒーを飲んでいると、
岩本先生が疲れた顔で入ってきた。
「お、岩本、疲れてるな、大丈夫か?」
「大丈夫じゃないですよ、ニコラス先輩。
昨日から38℃の高熱が続いてて、
体中、節々が痛いんですよ」
「そんなに熱が高いんやったら、休んだほうがええやろ」
「でも、今日も検査もあるし、
病棟に重症の患者がいるんで、
休める状況じゃないんですよ」
「インフルエンザか?」
「いや、調べてませんけどね。
でも陽性が出ても仕事はしないといけませんからね」
いまでこそ、医者も
熱が出れば、インフルエンザの検査をして、
陽性が出れば、
タミフルやらリレンザやらの抗インフルエンザ薬をしっかり飲んで、
熱が下がるまで自宅安静にするといった対応をしているが、
そのころは、まだ、
高熱が出ても、インフルエンザの検査をしたり、
クスリを飲んだりする時代ではなかった。
ただ、ひたすら根性と気合だけで治していたものだ。
「そうやなあ、医者が2人しかいないと、
休んでなんかいられないよな」

2012年6月2日土曜日

救急には薬物中毒はつきものだ

救急には精神科疾患はつきものだ。
普通の生活をしていると、なかなか関わることがないだろうが、
病院の外来の中でも、
特に救急で外来をやっていると、
世の中には心の病を抱えているヒトが、
よく、まあ、こんなにいるもんだ、と、実感する。
その中でも薬物中毒、
これも救急では頻回に見る症例だ。
うちの病院は精神科はないので、
あまり救急で薬物中毒患者を受け入れることはないが、
それでも、週に2、3人は運ばれてくる。
病院から出されている薬を、
とくに精神科なんかで出されている抗不安薬や眠剤などを
一気に何十錠も飲んで、
意識朦朧(いしきもうろう)状態で運ばれてくる。
そんなことをしてしまうきっかけは
ヒトそれぞれだ。
些細なケンカから衝動的に相手を心配させてやろうと飲むヒト
気分がさえなくて自暴自棄になって飲むヒト
つらいことがあって、本気で死のうと思って飲むヒト
精神科の病気で、判断能力が低下して飲むヒト
ただ、今の日本で出されている眠剤や精神安定剤は
大量に飲んでも、
薬の直接的な作用で死ねるものはない、といっていい。
本気で自殺を完遂するつもりなら、
簡単に確実にできる方法はいくらでもあるのだから、
大量に薬を飲んじゃうヒトは、
本気ではないんだろうなと思うが、
他人のボクには本音のところはわからない。
でも、どちらにしても、
死にたいと思う心の叫びはあるんだから、
それに対しては
真剣に向き合ってあげなければならない、と思う。
思うんだが、なかなかできない。
救急外来で、出会って、その場の処置はするものの、
その人の人生の問題や悩みを長期間にわたって、
診ていくなんて、それは外科医の仕事ではないから、
やっぱり精神科医に任せるしかない。
死にたい思うこと、これを希死念慮(きしねんりょ)といい、
自殺を図ることを自殺企図(じさつきと)という。
手首を浅く切って(リストカット)、運ばれてくる患者は
何度も同じことをくり返すことが多いが、
薬物中毒で入院した患者は、
そんなに頻回に同じことをくり返さないようだ。
自殺企図で大きな事件を起こすほど、
死にたい思う気持ち(希死念慮)のエネルギーを使いきって、
一時的にでも、気持ちが落ち着くことがある、と、
知り合いの精神科の医者が言っていた。

2012年4月28日土曜日

出血に対する遺伝子の思い

これは、ボクたちが寝ているときでも、
酒を飲んでグデングデンになっているときでも、
ご馳走を食べているときでも、
いつも働きつづけている。
これも飢餓や感染のときと同じ、遺伝子の話になるが、
これまでの動物の歴史の中では、
遺伝子は体が傷ついたときに、
ピタッと出血を止めることにヤッキになってきた。
ケガに弱い、
つまり出血が止まりにくい遺伝子は淘汰されていって、
ケガに強い、
つまり、出血をすぐに止める機能の高い遺伝子が
生き残ってきたのだろう。
ところが、である。
医療の進歩が、その凝固線溶系に異変をもたらしたのだ。
近年の医学の進歩はめざましい。
特にここ最近40年ほどは激烈なスピードで進んでいる。
その長足の進歩のおかげで、
今や、以前には到底助かるはずもなかった傷病(病気やケガ)も
どんどん助かる時代になってきている。
特に集中治療室なんてところは、
ニンゲンの衰えた臓器の機能を
最新の高性能な機器でサポートする
医療の最先端技術が結集した場所である。
ところが、これまで助からなかった傷病治療していると、
今度はこれまでならニンゲンに起こるはずのない
新たな病態が出てくるようになった。
そのひとつが、DIC(でぃーあいしー)という病態である。
DICとは
播種性血管内凝固(はしゅせいけっかんないぎょうこ)症候群というもので、
血管の中で血液が固まってしまうという異常事態が
全身に広がる(播種する)病気である。
ボクが書く、こんなおちゃらけ医療ブログで、
医者すら十分に理解できないような
複雑な病態であるDICについて一般のヒトたちに語るのは、
無謀で暴挙かもしれないが、
なるべくわかりやすく話をするつもりなので、
我慢して読んでほしい。
大きなケガや悪性腫瘍の末期だけでなく、
各臓器の不全(心不全、肝不全、腎不全、呼吸不全)が起こると、
全身の血管の内側の膜(血管内皮)が傷む。
そしてその傷んだ部分を修復しようとして、
血管内で凝固系が活発に動き出す(亢進:こうしん)。
ところが集中治療のなかったころは、
そういった重症に陥ると、
そのまま、その病気で命を落としていたので、
凝固系が亢進しても、それ以上の病態に進むことを
確認することもできなかった。

2012年4月22日日曜日

脳梗塞にtPA療法

ここ、数年で脳梗塞の治療は劇的に変わった
しびれや麻痺やしゃべりにくなどの症状が急に出たら、
脳卒中(脳梗塞や脳出血)を考えるが、
もし脳梗塞なら、発症から3時間以内に
血栓(血液の塊り)を溶かす治療をすると
症状がすっきりなくなる可能性が高くなった
こういうことを書くと、
みんな、何か症状が出ると、
脳梗塞だ、すぐ治療してくれ、と
救急に飛び込んできたりする
テレビで、病気の特集をすると
自分もその病気じゃないか、と心配して
次の日には、同じような症状の患者が大勢来る
何で、今日は同じ症状の患者ばかりが救急で来るんかなあ
昨日、何かテレビでやっていた?
ハイ、やってましたよ、
やっぱりね、そういうテレビって
現場の医者には、エライ迷惑だよな、
という事態となる
だから、今回書いている脳梗塞の話も、
特別な条件下で行う特殊な治療であることを
理解しておいてもらいたい
しびれや麻痺、力が入らない、しゃべりにくい、などの症状が
以前からあるとか、
徐々にひどくなってきたというのはダメ
ある瞬間に突然始まったことが重要なのだ