2013年7月13日土曜日

肝臓ガンについて2

こんばんは、岩本です。
前回は「肝臓ガンついて-1」にて
ガンの治療法をいくつかご紹介しましたが、
今日は私が30年以上、格闘して参りました
「肝動脈塞栓術(TACE)」についてご説明いたします。
■「肝動脈塞栓療法(TACE)」について
  肝臓がんの治療では血管をふさぐ施術としてTACEと呼ばれており、
  がんに通じる肝動脈をふさぎ、栄養不良にして
  ガン細胞を壊死(えし)させる仕組みです。
肝ガンは肝動脈で栄養されていますので
肝動脈に油の造影剤「リピオドール」と「抗癌剤」を流し、
血流を止めると肝ガンが消えるのではないかと思い
私なりに色々工夫しながら頑張って『TACE』を続けて来ました。

今では、今日「Cancer」に載った
『門脈・動脈同時塞栓療法(Angiographic Subsegmentectomy.AS)』
と言う治療法を行っております。
肝臓には門脈と肝動脈があり、
・肝動脈は主に肝臓に酸素を運ぶ血管
・門脈は腸で消化吸収された栄養物や
 腸内で出来た毒素を肝臓に運ぶ血管です。
この治療法で心臓から血液が送られる動脈だけでなく、
消化管から血液が流れる門脈も同時にふさぎ、
ガンとその周辺の肝組織を目に見えない小さな転移巣も含めて
肝の解剖学的に一気にやっつけてしまう治療法です。
外科の先生は亜区域レベルではそのような治療が当たり前ですが
亜亜区域レベルでの切除はほどんどまだ出来ません。
肝臓ガンは外科切除がうまく行われても
5年で80%以上が再発しますので
繰り返した治療が必要となります。

しかし私の「門脈・動脈同時塞栓療法」では
そのレベルで血管に沿った系統的な治療が出来ますので
肝臓に対するダメージはごくわずかですので
副作用や治療死はほとんどなく
現在では理想的な治療法だと考えております。
私なりに世界で最も良い治療法でないかと思い、
毎日いろいろな患者様と向き合い、
一人一人にとってより良い方法を考え、
共にガンと戦いながら頑張っております。

2013年6月30日日曜日

肝臓ガンについて

こんにちは。

今日は私が30年以上格闘して来た、肝臓ガンについてお話をいたします。

肝臓ガンと申しましても 肝臓からでたもの、
他の臓器から転移して来たもの等がありますが、
私が一番専門としているのは肝細胞がガンになった
肝細胞ガン(HCC)です。

(以下、肝細胞がんをHCCとします。)
HCCでは、1年間に約3万2千人の日本人が死亡し、
全世界では1年間に50万人以上が死亡しており、
HCCの多くはC型、B型の肝炎ウィルスの感染により発生します。

治療としては、外科切除、ラジオ波治療(RFA)、私が30年以上
行って来た肝動脈塞栓術(TACE)や肝移植 等があります。

■外科切除では、
 ガンを切除し取り除く治療ですので、
 ガン治療の基本と言っていいのですが、
 肝臓はなくては、人は生きれない臓器ですので、
 その人の肝臓能力と、HCCの広がりによって、
 手術できる人が限られています。
 最近は外科切除が原因として死亡される患者さんは
 少し少なくなりましたが、HCCはうまく切除できても
 5年以内に約80%が再発します。


■ラジオ波治療では、
 現在、日本だけでなく世界中でもてはやされている治療ですが、
 どういう訳か、私の周りではラジオ波治療の後、
 ガンが広がりリンパ節に転移をするケースや
 エコー下で針をガンにさすのですが、そのさした胸腹壁に
 再発したり、どうも経過が良くありません。
 動脈と言う血管の固まりであるHCCに針をさすのは、
 注意が必要と思っています。


■肝移植については
 移植となりますと高価でありますし、日本では生体肝移植が
 主ですのでいろんな意味で問題があります。
 当医院(医療法人岩本内科医院)では今まで3人の患者さんに
 移植をしてもらいましたが、現在元気な人は1人だけになりました。
 手術後の再発の問題や手術そのものが難しく、
 まだまだ問題があると思っていますが、今後進めて行かないといけない
 治療方法と思っています。

2013年6月15日土曜日

早期肝ガンについて

おはようございます。
今日は早期肝ガンについてお話をいたします。
昨年は肝ガン診断で大きな進歩がありました。
早期肝ガンについて、国際的コンセンサスが出来ました。
日本の久留米大学の神代先生や帝京大学の近藤福雄先生達の
努力のおかげです。
コンセンサスは、早期肝ガンは境界不明瞭で、
間質浸潤があり(門脈域の内にガンの浸潤があるもの)
まだ血管新生がない結節を早期肝ガンと言いましょう
と言うものです。
ガンちゃん先生は、このコンセンサスは待ちに待っていたものです。
今、日本を始め、世界中で肝硬変の結節は多段階に肝ガンになると
信じられています。これを多段階発癌説と言われております。
それに基づいて、細い針生検で適当に診断し、
PEIT(経皮的アルコール注入療法)やRFA(ラジオ波治療)が
行われています。
ところが今度決まったコンセンサスでは
早期肝癌は、間質浸潤があるもの(門脈域の内にガンの浸潤があるもの)
と決まりましたので、
細い針生検では、早期肝ガンは診断は出来ません。
なぜなら、細い針生検では門脈域は、ほとんど取れないからです。
要するに、世界中で適当に良性結節をガンと診断して
RFAなどが行われているのです。
RFAが、きちんとした肝ガンの治療であれば、
ガンちゃん先生は文句は言いませんが、私のところでは
RFAをしてもらった患者さん達はすべて再発し、
それが原因で・・・という患者さん達もかなり居ります。
きちんと早期肝ガンを診断したり、これをどのように扱うかは
今後、日本の医療界全体や世界的にきちんと決めていかなければ
いけない問題だと思っております。

2013年6月1日土曜日

神戸にて

こんばんは。
今、神戸へ来ております。
第16回「肝血流動態イメージ研究会」で
「門脈・動脈同時塞栓療法」を発表してきました。
ちょっと疲れて、
今日泊まるホテルの11階から神戸の夕日を見ながら
これを書いております。
夕日

昨日、「早期肝ガンについて」のお話致しましたが、
このシンポジュウムでは
肝細胞癌の多段階発癌を取り上げており、
日常の肝癌診療において、
慢性肝炎・肝硬変、前癌病変、早期肝癌、進行肝癌の
個別化診断がどこまで可能になってきたのか、
多方面からの最前線の話を伺い、活発に討論される研究会になります。
今回、私の行っております治療法での
早期肝ガンについて、日々の診療経緯などを紹介してきます。
24.門脈動脈同時塞栓療法(Angiographic subsegmentectomy:AS)の
すばらしい成果について (プログラム:47ページ参照)発表してきます。
学会発表は、ほぼ大学病院の先生方ばかりです。
私のような地方の開業医が、
発表することはめずらしいことなのですが、
出来る限り、公の場所で発表するようにしております。
臨床医として、日々の診療や手術をしながら
学会発表や執筆活動をすることは大変なことですが、
今まで患者さん達を最初から最後まで診てきた私が、
こういう場に出て発表することは
すごく大事なことだと思っております。
大学病院などの後ろ盾もなく、
今の日本の医療界の大きな壁を壊すことは難しいですが、
他の先生達に負けないよう、頑張って討論してきます。

2013年5月4日土曜日

はじめまして、ニコラスです。

はじめまして、ニコラスです。
大阪の中規模病院で外科医として働いてマス。
医者になって20年、もう中堅以上の立場にはなってるけど
気分は、まだまだ、仕事を始めた頃のままなんで
現場で走り回ってるのが好きだなあ
医者は全部で150名近くいるけど、
外科の症例がそれほど多くないので、
昔、救命センターで働いていたこともあり、
救急外来を担当することが多い。
救急には、病気やケガもいろいろ来るけど
患者自体、いろんなキャラの人が多いんで
ヒューマンウォッチャーとしても、興味が尽きないし飽きないんだよな。
さあ、今日も、昨日MKの手術をした患者の状態を見に行って
その後は、救急外来で救急車を待ってよっと。

2012年6月9日土曜日

不養生にもほどがある

10年以上前の話だが、
そのころボクは
トテカンチョ病院に月に数回、
外科の昼間だけの外来のバイトに行っていた。
そこには、大学の後輩で
脳外科をやっている岩本先生が、
大学病院の脳外科の医局から出向していた。
彼は医者になって6、7年ほどだった。
トテカンチョ病院の脳外科には、
40代後半の大歳先生が部長でいたが、
脳外科の医者は、その部長と2人だけだったので、
結構忙しくしていた。
しかし、そろそろ、油の乗りかかっている時期でもあり、
手術や検査を一人でできるようになってきて、
仕事が面白くて仕方がないって感じだった。
小さい町の中核病院だったので、
脳外科の患者も多く、
朝から外来をして、昼から手術をして、
合間に検査を入れて、夜は救急の緊急手術に入って、
昼も夜もない生活を続けていた。
ある日、ボクが外来の仕事を終えて、
医局でのんびりとコーヒーを飲んでいると、
岩本先生が疲れた顔で入ってきた。
「お、岩本、疲れてるな、大丈夫か?」
「大丈夫じゃないですよ、ニコラス先輩。
昨日から38℃の高熱が続いてて、
体中、節々が痛いんですよ」
「そんなに熱が高いんやったら、休んだほうがええやろ」
「でも、今日も検査もあるし、
病棟に重症の患者がいるんで、
休める状況じゃないんですよ」
「インフルエンザか?」
「いや、調べてませんけどね。
でも陽性が出ても仕事はしないといけませんからね」
いまでこそ、医者も
熱が出れば、インフルエンザの検査をして、
陽性が出れば、
タミフルやらリレンザやらの抗インフルエンザ薬をしっかり飲んで、
熱が下がるまで自宅安静にするといった対応をしているが、
そのころは、まだ、
高熱が出ても、インフルエンザの検査をしたり、
クスリを飲んだりする時代ではなかった。
ただ、ひたすら根性と気合だけで治していたものだ。
「そうやなあ、医者が2人しかいないと、
休んでなんかいられないよな」

2012年6月2日土曜日

救急には薬物中毒はつきものだ

救急には精神科疾患はつきものだ。
普通の生活をしていると、なかなか関わることがないだろうが、
病院の外来の中でも、
特に救急で外来をやっていると、
世の中には心の病を抱えているヒトが、
よく、まあ、こんなにいるもんだ、と、実感する。
その中でも薬物中毒、
これも救急では頻回に見る症例だ。
うちの病院は精神科はないので、
あまり救急で薬物中毒患者を受け入れることはないが、
それでも、週に2、3人は運ばれてくる。
病院から出されている薬を、
とくに精神科なんかで出されている抗不安薬や眠剤などを
一気に何十錠も飲んで、
意識朦朧(いしきもうろう)状態で運ばれてくる。
そんなことをしてしまうきっかけは
ヒトそれぞれだ。
些細なケンカから衝動的に相手を心配させてやろうと飲むヒト
気分がさえなくて自暴自棄になって飲むヒト
つらいことがあって、本気で死のうと思って飲むヒト
精神科の病気で、判断能力が低下して飲むヒト
ただ、今の日本で出されている眠剤や精神安定剤は
大量に飲んでも、
薬の直接的な作用で死ねるものはない、といっていい。
本気で自殺を完遂するつもりなら、
簡単に確実にできる方法はいくらでもあるのだから、
大量に薬を飲んじゃうヒトは、
本気ではないんだろうなと思うが、
他人のボクには本音のところはわからない。
でも、どちらにしても、
死にたいと思う心の叫びはあるんだから、
それに対しては
真剣に向き合ってあげなければならない、と思う。
思うんだが、なかなかできない。
救急外来で、出会って、その場の処置はするものの、
その人の人生の問題や悩みを長期間にわたって、
診ていくなんて、それは外科医の仕事ではないから、
やっぱり精神科医に任せるしかない。
死にたい思うこと、これを希死念慮(きしねんりょ)といい、
自殺を図ることを自殺企図(じさつきと)という。
手首を浅く切って(リストカット)、運ばれてくる患者は
何度も同じことをくり返すことが多いが、
薬物中毒で入院した患者は、
そんなに頻回に同じことをくり返さないようだ。
自殺企図で大きな事件を起こすほど、
死にたい思う気持ち(希死念慮)のエネルギーを使いきって、
一時的にでも、気持ちが落ち着くことがある、と、
知り合いの精神科の医者が言っていた。