2013年6月30日日曜日

肝臓ガンについて

こんにちは。

今日は私が30年以上格闘して来た、肝臓ガンについてお話をいたします。

肝臓ガンと申しましても 肝臓からでたもの、
他の臓器から転移して来たもの等がありますが、
私が一番専門としているのは肝細胞がガンになった
肝細胞ガン(HCC)です。

(以下、肝細胞がんをHCCとします。)
HCCでは、1年間に約3万2千人の日本人が死亡し、
全世界では1年間に50万人以上が死亡しており、
HCCの多くはC型、B型の肝炎ウィルスの感染により発生します。

治療としては、外科切除、ラジオ波治療(RFA)、私が30年以上
行って来た肝動脈塞栓術(TACE)や肝移植 等があります。

■外科切除では、
 ガンを切除し取り除く治療ですので、
 ガン治療の基本と言っていいのですが、
 肝臓はなくては、人は生きれない臓器ですので、
 その人の肝臓能力と、HCCの広がりによって、
 手術できる人が限られています。
 最近は外科切除が原因として死亡される患者さんは
 少し少なくなりましたが、HCCはうまく切除できても
 5年以内に約80%が再発します。


■ラジオ波治療では、
 現在、日本だけでなく世界中でもてはやされている治療ですが、
 どういう訳か、私の周りではラジオ波治療の後、
 ガンが広がりリンパ節に転移をするケースや
 エコー下で針をガンにさすのですが、そのさした胸腹壁に
 再発したり、どうも経過が良くありません。
 動脈と言う血管の固まりであるHCCに針をさすのは、
 注意が必要と思っています。


■肝移植については
 移植となりますと高価でありますし、日本では生体肝移植が
 主ですのでいろんな意味で問題があります。
 当医院(医療法人岩本内科医院)では今まで3人の患者さんに
 移植をしてもらいましたが、現在元気な人は1人だけになりました。
 手術後の再発の問題や手術そのものが難しく、
 まだまだ問題があると思っていますが、今後進めて行かないといけない
 治療方法と思っています。

2013年6月15日土曜日

早期肝ガンについて

おはようございます。
今日は早期肝ガンについてお話をいたします。
昨年は肝ガン診断で大きな進歩がありました。
早期肝ガンについて、国際的コンセンサスが出来ました。
日本の久留米大学の神代先生や帝京大学の近藤福雄先生達の
努力のおかげです。
コンセンサスは、早期肝ガンは境界不明瞭で、
間質浸潤があり(門脈域の内にガンの浸潤があるもの)
まだ血管新生がない結節を早期肝ガンと言いましょう
と言うものです。
ガンちゃん先生は、このコンセンサスは待ちに待っていたものです。
今、日本を始め、世界中で肝硬変の結節は多段階に肝ガンになると
信じられています。これを多段階発癌説と言われております。
それに基づいて、細い針生検で適当に診断し、
PEIT(経皮的アルコール注入療法)やRFA(ラジオ波治療)が
行われています。
ところが今度決まったコンセンサスでは
早期肝癌は、間質浸潤があるもの(門脈域の内にガンの浸潤があるもの)
と決まりましたので、
細い針生検では、早期肝ガンは診断は出来ません。
なぜなら、細い針生検では門脈域は、ほとんど取れないからです。
要するに、世界中で適当に良性結節をガンと診断して
RFAなどが行われているのです。
RFAが、きちんとした肝ガンの治療であれば、
ガンちゃん先生は文句は言いませんが、私のところでは
RFAをしてもらった患者さん達はすべて再発し、
それが原因で・・・という患者さん達もかなり居ります。
きちんと早期肝ガンを診断したり、これをどのように扱うかは
今後、日本の医療界全体や世界的にきちんと決めていかなければ
いけない問題だと思っております。

2013年6月1日土曜日

神戸にて

こんばんは。
今、神戸へ来ております。
第16回「肝血流動態イメージ研究会」で
「門脈・動脈同時塞栓療法」を発表してきました。
ちょっと疲れて、
今日泊まるホテルの11階から神戸の夕日を見ながら
これを書いております。
夕日

昨日、「早期肝ガンについて」のお話致しましたが、
このシンポジュウムでは
肝細胞癌の多段階発癌を取り上げており、
日常の肝癌診療において、
慢性肝炎・肝硬変、前癌病変、早期肝癌、進行肝癌の
個別化診断がどこまで可能になってきたのか、
多方面からの最前線の話を伺い、活発に討論される研究会になります。
今回、私の行っております治療法での
早期肝ガンについて、日々の診療経緯などを紹介してきます。
24.門脈動脈同時塞栓療法(Angiographic subsegmentectomy:AS)の
すばらしい成果について (プログラム:47ページ参照)発表してきます。
学会発表は、ほぼ大学病院の先生方ばかりです。
私のような地方の開業医が、
発表することはめずらしいことなのですが、
出来る限り、公の場所で発表するようにしております。
臨床医として、日々の診療や手術をしながら
学会発表や執筆活動をすることは大変なことですが、
今まで患者さん達を最初から最後まで診てきた私が、
こういう場に出て発表することは
すごく大事なことだと思っております。
大学病院などの後ろ盾もなく、
今の日本の医療界の大きな壁を壊すことは難しいですが、
他の先生達に負けないよう、頑張って討論してきます。