2012年4月28日土曜日

出血に対する遺伝子の思い

これは、ボクたちが寝ているときでも、
酒を飲んでグデングデンになっているときでも、
ご馳走を食べているときでも、
いつも働きつづけている。
これも飢餓や感染のときと同じ、遺伝子の話になるが、
これまでの動物の歴史の中では、
遺伝子は体が傷ついたときに、
ピタッと出血を止めることにヤッキになってきた。
ケガに弱い、
つまり出血が止まりにくい遺伝子は淘汰されていって、
ケガに強い、
つまり、出血をすぐに止める機能の高い遺伝子が
生き残ってきたのだろう。
ところが、である。
医療の進歩が、その凝固線溶系に異変をもたらしたのだ。
近年の医学の進歩はめざましい。
特にここ最近40年ほどは激烈なスピードで進んでいる。
その長足の進歩のおかげで、
今や、以前には到底助かるはずもなかった傷病(病気やケガ)も
どんどん助かる時代になってきている。
特に集中治療室なんてところは、
ニンゲンの衰えた臓器の機能を
最新の高性能な機器でサポートする
医療の最先端技術が結集した場所である。
ところが、これまで助からなかった傷病治療していると、
今度はこれまでならニンゲンに起こるはずのない
新たな病態が出てくるようになった。
そのひとつが、DIC(でぃーあいしー)という病態である。
DICとは
播種性血管内凝固(はしゅせいけっかんないぎょうこ)症候群というもので、
血管の中で血液が固まってしまうという異常事態が
全身に広がる(播種する)病気である。
ボクが書く、こんなおちゃらけ医療ブログで、
医者すら十分に理解できないような
複雑な病態であるDICについて一般のヒトたちに語るのは、
無謀で暴挙かもしれないが、
なるべくわかりやすく話をするつもりなので、
我慢して読んでほしい。
大きなケガや悪性腫瘍の末期だけでなく、
各臓器の不全(心不全、肝不全、腎不全、呼吸不全)が起こると、
全身の血管の内側の膜(血管内皮)が傷む。
そしてその傷んだ部分を修復しようとして、
血管内で凝固系が活発に動き出す(亢進:こうしん)。
ところが集中治療のなかったころは、
そういった重症に陥ると、
そのまま、その病気で命を落としていたので、
凝固系が亢進しても、それ以上の病態に進むことを
確認することもできなかった。

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